界面活性剤と聞いただけで、なんとなく肌に悪いと言う印象を持つ人は多く、界面活性剤を使わず、無添加せっけんと呼ばれる石鹸を使えば肌に優しいはず、と思い込んでいる方もいらっしゃいますね。
でも実は、無添加だろうが天然由来だろうが、石けんも界面活性剤の一種です。
しかも、刺激が少ないと言われる界面活性剤の中では、刺激が強い方なんですよ。
「界面活性剤」とは水と油を混ぜ合わせるための物質の総称で、肌への刺激性は、主に水の中でイオン化するのかしないのか、するならプラスかマイナスかである程度決まります。
現代の生活では、化粧品やクレンジング、洗顔石鹸、シャンプー、ボディーソープに石けん、さらに食品に至るまで、界面活性剤を避けては生活できません。
「界面活性剤」=「悪」としてしまうのではなく、「刺激の強い界面活性剤」と「刺激の少ない界面活性剤」を見分けることができるように知識をつけて、適材適所で界面活性剤を選べるようになれるといいですね (*´∨`*)
そこで今回は、特に洗顔石鹸やクレンジング、シャンプー選びの参考になるように、「界面活性剤」の基礎知識を、できるだけ分かりやすくまとめてみます (`∂∀≦´)-☆
界面活性剤はとっても身近な存在
界面活性剤とは、読んで字のごとく、境界面を活性化する物質のことです。
今回注目する境界面とは「水」と「油」の境界面のこと。
水の中に油を垂らすと、混ざり合うことなく分離しますよね?この水と油の境界面のことです。
例えば、マヨネーズは酢と植物油と卵黄からできています。
酢と植物油は水分と油分ですから、これだけでは混ぜ合わせてもすぐに分離してしまいます。
これが食べる前に混ぜ合わせて使う、「ドレッシング」の状態ですね。
これに卵黄を加えることで、きれいに混ざったクリーム状のマヨネーズが出来上がります。
そしてこの時の卵黄の役割は「界面活性」、つまり卵黄はマヨネーズを作るための界面活性剤なのです。
卵黄の中で界面活性剤の役割を果たすのが「レシチン」です。
このレシチン、私たちの体の中の1個1個の細胞にも存在し、細胞膜を通過して細胞に必要なものを取り入れ、老廃物を排出する役割を担う、生命の基礎物質ともいえる物質です。
この働きを可能にするのが「界面活性」であり、界面活性剤のレシチンがあるから生物は生きることができているとも言えます。
全ての界面活性剤が「悪」なのではない。
界面活性剤の形状と油汚れが落ちる仕組み
界面活性剤の形状
界面活性剤は、油分となじみやすい「親油基」と、水となじみやすい「親水基」を持つ分子で、どちらにもなじむことができるので「両親媒性分子」と呼ばれます。
界面活性剤で油汚れが落ちる仕組み
水と油はなじまないので、油汚れは水だけで洗い流すことはできません。
そこで水に洗剤を入れて油汚れを落とすのですが、この時働いているのが界面活性剤です。
水に溶け込んだ界面活性剤は、油となじみやすい親油基が油汚れのに吸い寄せられ、くっついていきます。
油となじみたい親油基は、次々と隙間なく油汚れを取り囲み、やがて親水基を外側にした球状になって浮き上がります。
界面活性剤によって取り囲まれた油汚れは、外側が親水基なので水で洗い流すことが可能になります。
界面活性剤が油汚れを取り囲んで浮き上がらせ、水で流れるようにして油汚れを洗い流す。
界面活性剤の種類
界面活性剤は大別すると、水の中で親水基がイオン化する「イオン性界面活性剤」と、イオン化しない「非イオン(ノニオン)界面活性剤」に分けられます。
さらにイオン性界面活性は、親水基がマイナスにイオン化する「陰イオン(アニオン)界面活性剤」と、プラスにイオン化する「陽イオン(カチオン)界面活性剤」、それと水溶液のpHによって、アルカリ性なら陰イオン、酸性なら陽イオンになる、「両性(アンホ)界面活性剤」に分けられます。
陰イオン(アニオン)界面活性剤
特徴
水に溶けた時、親水基がマイナスにイオン化(アニオン)する界面活性剤。
主な用途
洗浄剤・可溶化剤・乳化助剤として、シャンプーや洗顔料に使用されることが多いです。
洗浄力を求める場合アニオン型界面活性剤を選びますが、その中でもアミノ酸系のものがオススメです。
価格は高めで、泡立ちや洗浄力が落ちますが、ほとんどが弱酸性の肌にやさしい界面活性剤で、石けんカスもでません。
皮膚刺激性
比較的弱いですが、アンホ型やノニオン型よりは刺激性があると考えた方がいいでしょう。
成分例
名前に「石ケン」とつくものは、油脂や脂肪酸とアルカリを反応させて作られています。
界面活性剤より良いと思われがちな石けんは、アニオン界面活性剤のひとつです。
- カリ石ケン素地
- 石ケン素地
名前の最後に「…硫酸ナトリウム」とつくものは、泡立ちが良く洗浄力が高いのに価格が安いので、安価なシャンプーや洗顔料に使われることが多い成分です。
ただ、皮膚への刺激性は高めなので、肌の弱い方は避けたい成分になります。
- ステアリル硫酸Na
- ラウリル硫酸Na
- ラウレス硫酸Na
名前の中にアミノ酸の名前が入っているものは、アミノ酸系界面活性剤です。
アミノ酸系界面活性剤は全てがアニオン界面活性剤と言うわけではありませんが、ほとんどがアニオン界面活性剤に分類されます。
(太字部分がアミノ酸)
- ココイルグルタミン酸Na
- ラウリルリン酸Na
- ココイルイセチオン酸Na
- ラウロイルメチルタウリンNa
- ミリストイルメチルアラニンNa
- ココイルグリシンNa
- ココイルサルコシンTEA
アミノ酸系界面活性剤は肌に優しい成分ですが、泡立ちが良くなく、汚れ落ちも劣るので、他の界面活性剤と一緒に配合される場合が多いです。
アミノ酸系シャンプーなどを選ぶ場合は、全成分表示の最初の方にアミノ酸系界面活性剤が出てくるものを選びましょう。
例えば、「アミノ酸系シャンプー」として販売しているのに、全成分表示を見ると硫酸ナトリウム系の界面活性剤が先に表示されているものがあったとします。
そういったものは安価でも、メインの洗浄成分は硫酸ナトリウム系になりますので、肌の弱い方には向きません。
硫酸系は洗浄力が高く安価だが、刺激が強め。
肌へのやさしさを求めるなら、高価になるがアミノ酸系を選択すべし。
全成分表記を見て、アミノ酸系が前の方に出てくるものを選ぼう。
陽イオン(カチオン)界面活性剤
特徴
水に溶けた時、親水基がプラスにイオン化(カチオン)する界面活性剤。
主な用途
柔軟剤・帯電防止剤・殺菌剤としての働きがあります。
柔軟・帯電防止の作用を利用して、トリートメントやコンディショナー、リンスに使われます。
毛髪はマイナスに帯電しているので、プラスに帯電しているカチオン界面活性剤と強力に引き合って吸着し、柔軟性や静電気防止、殺菌効果を発揮します。
殺菌作用を利用して、制汗剤や除菌ウエットティッシュ、ニキビ用薬用化粧品に配合される成分もあります。
皮膚刺激性
やや刺激が強い成分です。
トリートメントやコンディショナーをつける場合は、できるだけ毛先だけにつけ、頭皮につかないようにしたいですね。
また、カチオン界面活性剤が配合された除菌ウエットティッシュの、肌の弱い方や赤ちゃんへの使用には注意が必要です。
成分例
名前の後ろに「…クロリド」「…ブロミド」「…アミン」がつきます。
コンディショニング作用が高いが刺激強め
- ベンザルコニウムクロリド
- ステアルトリモニウムクロリド
- セトリモニウムブロミド
コンディショニング作用が低いが刺激弱め
- コカミドプロピルジメチルアミン
- イソステアラミドプロピルジメチルアミン
殺菌作用があるので、制汗剤や除菌シート、薬用ニキビ化粧品にも使われる。
肌への刺激が強めなので使い方に注意。
両性(アンホ)界面活性剤
特徴
水に溶けた時、pHがアルカリ性なら陰イオン化、酸性なら陽イオン化する界面活性剤です。
陰イオン化すればアニオン型界面活性剤のような働きをし、陽イオン化すればカチオン型界面活性剤のような働きをしますが、どちらの作用も穏やかです。
洗浄力や殺菌力をマイルドにする目的で、他の界面活性剤と一緒に配合されることが多い界面活性剤です。
主な用途
洗浄剤や乳化助剤としてベビー用または高級なシャンプー・リンスなどに使われます。
皮膚刺激性
肌への刺激の弱く、アニオン型界面活性剤よりマイルドです。
成分例
名前の後ろに「…ベタイン」「…オキシド」、名前の中間に「…アンホ…」がつきます。
- コカミドプロピルベタイン
- ココアミンオキシド
- ココアンホ酢酸Na
肌への刺激が弱く、ベビー用、または高級なシャンプーに使われる。
アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤の、洗浄力や殺菌力を保ったままマイルドにする目的で、一緒に配合されることが多い。
非イオン(ノニオン)界面活性剤
特徴
水に溶けた時、親水基がイオン化しない界面活性剤です。
水の硬度(ミネラルの量)や、pH、イオンの影響を受けにくく、他のどの界面活性剤とも併用できます。
その使いやすさと肌への刺激のなさから、近年、アニオン界面活性剤に変わって代表的な界面活性剤となりつつあります。
主な用途
洗浄力はあまり高くなく、乳化剤、可溶化剤として化粧品に多く使われています。
シャンプーなどに配合される場合も、他の界面活性剤の補助的な目的で使用される界面活性剤です。
皮膚刺激性
刺激はほとんどなく、目にしみにくいものもあります。
成分例
とても多くの種類がありますが、代表的なものは名前に「…ポリグリセリル-数字」「…グリセリル」や、「…ソルビタン」、「PEG-数字…」となっているものなどがあります。
- ミリスチン酸ポリグリセリル-10
- ステアリン酸グリセリル
- バルミチン酸グリセリル
- PEG-40水添ヒマシ油/PEG-60水添ヒマシ油
肌への刺激はほとんどない。
洗浄力は高くないので、洗浄剤としては他の界面活性剤の補助的な目的で、あわせて配合される。
原料は天然由来がいいのか
「石油系合成界面活性剤は不使用です!」洗顔石鹸やシャンプーの宣伝で良く見かける文句ですね。
原料は天然由来のものが良くて、合成のもの、ましてや石油由来のものは絶対ダメ。
そんなイメージ一般化してしまっているので利用されている宣伝文句です。
例えば、石油系合成界面活性剤の例として頻繁にあげられている「ラウリル硫酸Na」で説明すると、この界面活性剤、確かに肌への刺激は強めで、肌の弱い方にはおすすめできません。
でも実は「ラウリル硫酸Na」は、石油からも、ココヤシの木から採れる天然由来の植物油「ヤシ油」からも作ることができます。
しかも、石油を加工するよりもヤシ油から作った方が断然簡単で、実際ほとんどの石油系と言われる界面活性剤はヤシ油から作られています。
石油系合成界面活性剤は、天然由来ということになってしまいますね (;^ω^)
界面活性剤の肌への刺激性は、原料よりも出来上がった状態で決まります。
油と良くなじむ親油基は、石油からとってもヤシ油からとっても結局は同じ成分で、それにどのような親水基をつけるのか、それはイオン化するのかしないのか、するならプラスかマイナスかで肌への刺激性がだいたいわかります。
原料よりも使われている界面活性剤のタイプと性質で選ぶようにしたいですね。
石油系合成界面活性剤は、実は天然由来。
肌への刺激性は、原料ではなく、親水基の性質で見極める。
まとめ
何かと誤解の多い界面活性剤ですが、界面活性剤とは水と油を混ぜ合わせる物質の総称で、食品にも使われていますし、私たちの細胞一つ一つも持っていて、栄養を細胞の中に入れ、老廃物を細胞の外に出す役割を果たしています。
では、界面活性剤は肌に悪い影響はないのか?と言えばそれも極論ですね。
界面活性剤には数千もの種類があり、現在もその数は増え続けています。
その中には肌への刺激性が強く、あまり肌に触れないほうが良いものも普通に売られています。
説明書きを読むと「頭皮に触れないように毛先に使用してください。」と書かれたトリートメントは多いですよね。
洗浄力の強い洗浄剤は、大切な肌の皮脂まで奪ってしまって、肌荒れなどのトラブルを起こす場合もあります。
それとは逆に、ほとんど刺激がなく、目薬に配合されるものもあります。
その性質は、石油由来だから、合成だからとか悪いとか、天然由来だから良いといった具合に簡単に決められるものではありません。
どんな肌タイプの人が、何を目的に界面活性剤を使用するのかによって、選ぶ必要があります。
例えば脂性肌で、髪のベタツキに悩んでいる方が、洗浄力の弱いシャンプーを使っていては悩みは解消しません。
年齢を重ねて皮脂の分泌が減ってきた女性が(男性は年齢を重ねても皮脂の量はあまり変わりません)、洗浄力の強いシャンプーを使っていては、頭皮の乾燥を招き、ダメージを与えかねません。
ウォータープルーフタイプの落ちにくいメイクをしている人が、肌に優しくても洗浄力の弱いクレンジングを使っていては、メイク汚れが肌に残り、それが酸化すればかえって肌にダメージを与えてしまいます。
石けんでも落とせるタイプの軽いメイクの人は、洗浄力の高い、刺激のある界面活性剤の入ったクレンジングを使う必要はありません。
企業が自社の商品を売るために作ったイメージに踊らされることなく、適材適所で正しく界面活性剤を選びたいものですね (°▽^ *)ノ⌒☆